三日坊主三日坊主

このブログは、何をやっても続かない三日坊主の僕が、三日坊主を更に三日坊主する事で三日坊主を脱却しようと目論むブログです。継続は力なり!(説得力皆無)

文具店にデスノートを買いに来たおじさんの話

僕は今の仕事に転職する前、とある文具店に勤めていた。

広さは一般的なコンビニの4フロア分ぐらい。文具の基本を網羅するには十分な広さだ。筆記具やノートから事務用品、こども向けのファンシー文具、小洒落た雑貨文具に高級筆記具と、ある程度のものはひと通り揃う、いわゆる町の文具店である。

 

あまり忙しくない平日の昼過ぎ、簡単な作業をこなしながら営業していた時の話。

一人の男性が入店し、そのまま僕のいるレジめがけて歩いてきた。見た感じ60代後半〜70代前半、おじさんとおじいさんの間ぐらいの風貌だ。

入店するやいなやレジに向かってくる場合は十中八九問い合わせである。「あの商品ありますか?」だったり、「これを注文したいんですが」だったり。たまに取り置きの商品を引き取りにくることもあるが、そんな時は大抵手にお客様控えの用紙を持っている。

手ぶらでこちらに向かってきた男性は、間違いない、きっと商品の問い合わせだ。
その頃すでに5年以上勤続して調子に乗っていた僕は『どういったものをお探しかな?』という、全てを知り尽くした仏のような態度で男性を迎えた。

すると開口一番、

 

 

 男性「デスノートはありますか?」

 

 

………?!
様々なケースを想定していたが、完全に予想外の問い合わせに僕は一瞬固まる。思考回路はショート寸前、今すぐ会いたいよ。

軽く深呼吸をしてから僕は考えた。
「(前の店と間違えているのかな…)」
確かに今の文具店ができる前は、中古のDVDや本を扱うお店だった。お店が変わって数年経つが、いまだに間違えて入ってくる人はいる。

僕「あの…デスノートって、漫画のやつですか?」
と尋ねようとした時、男性が僕の言葉をさえぎるように同じ質問を繰り返した。


男性「テレビで見たんやけどデスノート、ありますか?」


………?!
違う、勘違いではない!!確信を持って文具店に『DEATH NOTE』を探しに来ている!!!

本気か…?!

この時ばかりはさすがに本気と書いてマジと読んだ。後にも先にもこの時だけだ。

本気か…?!

まさかこのおじさん(以下オッサン)は本当に『デスノート』なる物が存在していると思っているのか…。そういえばこの間実写版映画『DEATH NOTE』が地上波初登場していたし…。クライマックスは何言ってるかよく聞き取れんかったけど…。

間違いない。このオッサンは『デスノート』の存在を信じ込んでいる。その証拠に、僕には笑顔を向けているが目の奥は全く笑っていない。人類がまだ到達したことがない海底のような、どこまでも深くドス黒い狂気を感じる。

マジでチョーこわい。

新しいアサルトアイテムを見つけ、嬉々としてその獲物を探し回るこのオッサンはプロの殺し屋か…いや、この喜び方はどこか異常な……分かった!ナチュラル・ボーン・キラーズだ。現実でこの言葉を使うとは思ってもみなかった。


ナチュラル・ボーン・キラーズ


…………………

おしっこチビりそうなんですけど!!


突然の尿意に僕は我を取り戻した。予想外の急な出来事で少し取り乱していたようだ。

ナチュラル・ボーン・キラーズではないにしても、『デスノート』を探しにくるとは何事か。殺意の塊ではないか。『デスノート』を使って何をする気だ?

①一人のレイディ(ばあさん)を巡って、恋のライバルじいさんを闇に葬るつもりか。

②町のゲートボール大会で競技中妨害された事に怒りを覚え、関係者を一人残らず粛清するつもりか。

③いわゆる最近のケシカラン若者たちに『ワシらの若い頃はアタック』をお見舞いするつもりか。


なんということだ…………

とりあえず抑えきれない殺意を携えていることはまぁヨシとして(ヨクない)、不思議なのはなぜこの文具店を選んだのかというところだ。

まさか、この僕がリュークに見えたのか?

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失礼な!まぁ確かに似たような顔の人はたまに居るけれども。

 

それともこの僕がレムに見えたというのか?

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失礼な!まぁ確かに似たような顔の人はたまに居るけれども。

 

はたまたこの僕がジェラスに見えたと言うのか?

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失礼な!まぁ確かに似たような顔の人はたまに居るけれども。

 

にわかに信じがたい事だが、この僕がシドウに見えたと言うのか?

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失礼な!まぁ確かに似たような顔の人はたまに居るけれども。

僕は自分の顔がリュークに似ているかどうかを真剣に悩みながら、少しずつ冷静さを取り戻していた。
そうして、このナチュラル・ボーン・ジジーをどのように諭そうかと考え始めていた。

…それにしても、この年でそんなにも人に恨みがあるのか…もう仕事も定年じゃないの?ある程度やりきったんじゃないの?優しくなりましょうよ。全部許して、残りの人生楽しく遊んで暮らしましょうよ。

…遊んで暮らす………遊び………

はっ!!もしかして、遊びたいだけなのか?!『デスノート』が実在しないということはもちろん分かっていて、『デスノートごっこ』がしたいだけなのか?!

ジジフレやババフレと共に、
「あいつムカつくからデスノートに書いてやろうぜ〜」だの
「え、こんな名前書いちゃうの?!この人のこと嫌いだったんだ〜」だの
「ちょっと〜、なにワシの名前書いとんじゃよ〜」だの

やいのやいの


……………………

趣味のワリぃ遊びだなコノヤロー!!

ちょっと待てよ……『デスノートごっこ』をしたいのなら出来なくもないのではないか?
僕も文具店スタッフの端くれだ。店内のありとあらゆる商品の中から、一つの解答を導きだした。

普通ノートと言えば、campusやenglishといった文字が表紙にプリントされているものがスタンダードだ。しかしちょうどその頃、『デスノート』のような真っ黒な厚紙を表紙に使用したノートが入荷していたのだ。真っ黒な表紙にカラーペンなどでデコることで、自分だけのノートを作ることが可能というわけだ。

これだ!!

このノートを元にして、銀色のボールペンを使えば『デスノート』が作れるじゃないか!!
待ってろオッサン、完璧な『デスノート』を作らせてやんよ。

 

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そう考えて勝利を確信していると、オッサンがまた口を開いた。

オッサン「遺言を書いたり、もしもの事があった時に使えるやつらしいんやけどな〜、デスノート

…………………………
…………………………
…………………………


はっ……!!
それ知ってる!!それデスノートじゃない!!
エンディングノート』やで!!

コクヨから出ている、不慮の事故や何かあった時の為の『もしもの時に役立つノート』、別名『エンディングノート』やで!!

 


DEATH NOTE』やないんやで〜〜〜!!

 

人騒がせな勘違いに気づいた僕は、目当てのノートがある場所にすみやかにオッサンを案内した。

 


オッサンは『エンディングノート』をざっと見たのち、何も買わずに帰っていった…………

 

DEATH NOTE - Wikipedia

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